証拠保全の重要性について
- 医療事件の場合、患者側は法的な請求をする前に、第一に「事実を把握し」第二に「この事実が医学的にみて適切なものであったか」を調査し、第三に「法的にみて適切かどうか(過失があったかどうか)」を判断する必要があります。そして基本的には、医学的にも法的にも不適切であると判断したものについてのみ、法的な請求をすることになります。
医療事件は事実を把握するために必要となる資料の種類や量がとても多く、しかも、それらは医療機関側に偏在しているため、他の事件に増して事実の把握に手間がかかります。また、首尾よく事実を把握できたとしても、医療事件は他の事件と違って、その事実が「医学的にみて適切かどうかを知る」必要があり、そのためには医学文献を精査したり医師の意見を仰いだりする必要もあります。このように、医療事件は法的請求をする前の準備にたいへんな手間がかかりますが、これを避けては通れません。
トップページでもご説明致しましたが、ご本人や家族の方が証拠保全の申し立てを行うことは可能です。しかし、保全するために必要な目録の申告漏れ(診療記録、検査記録、手術動画、診断書、各種サマリ)などがあると、執行日に病院側に提出してもらえず保全できない場合がありますので、証拠保全はできるだけ、専門知識のある弁護士にご依頼することをおすすめ致します。
また、医療費関連の証拠物として、患者側は健康保険組合等にレセプト(診療報酬明細書)を開示請求できますが、この処理には、「患者からレセプトの開示請求があった」旨が、健康保険組合等から該当の病院へ照会される仕組みになっているため患者の意図が相手側(病院側)に察知され、場合によっては、病院側が都合が悪いカルテ等が改ざんしまう可能性もあります。
なので一般の方は生兵法でそのような(レセプトの請求等)ことを単独で行うよりも、やはり、医療専門のしっかりとした弁護士に相談し、調査(証拠保全)を行うことをおすすめ致します。
証拠保全のカメラ(写真)撮影について
証拠保全の現場では、相手側(病院側)の環境や状況が把握できないかったり、検証物がどのような状態で提出されるかは、その現場に行ってみないとわからないことが多々あります。そのため我々撮影スタッフは、すべての記録を完全なかたちで保全するために、常に臨機応変な対応が求められます。
よくご依頼者の方に「コピーしたら早いし安上がりじゃないのですか?」というご質問を受けますが、コピー機での複写には大きさや形状などに制限があるため、全てがきれいな紙ベースではない限り複写不可能なこともあり、また、ハンディータイプのスキャナーでは鮮明に撮れませんし、病院側でコピーして頂ける保証もないので、そこを頼りにするわけにはいきません。
写真撮影は書類に大量に貼付けられた記録にも迅速に対応でき、エコーや写真類の記録にも鮮明に複写することが可能です。またレントゲンフィルム等の画像記録も写真撮影により高画質で素早く記録化することができますので、証拠保全の写真撮影は必要不可欠なのです。